活字嫌いのくせに趣味で文芸をしています。10月の文フリ札幌でよせばいいのにたくさん本を買いました。折角なので言わずとしれたすばらブックたちを読んだ感想文を、活字嫌いの観点で書いてみます。すばらブックを書いた人も、よもや活字嫌いに感想文を書かれるとは思っていなかったでしょう。ふふふ……
『北大短歌』(以下「ほくたん」)第9号は短歌だけかと思ったらたくさん文章が載っていました。今回の特集は「視覚しない短歌」。視覚支援に携わる身としては読まないわけにいかないし、短歌なら文字数少なくて読みやすいかな~と買いました。たくさん文章が載っていました。
あくまでいち活字嫌いのパターンですが、気の重い文章を読むときは最後から読むようにしています。分かった気になるからです。ただ今回はあんまり分かりませんでした。頭のいい人は文章を順序だてて書くので、最後だけ読んでも分かるわけがないのです。結局一ヶ月かけて3編の評論を読みました。
その中で、視覚支援に携わる者だから感じた感想があったので書いてみます。山口在果さんの「谺でしょうか、そう、誰でも。―『手稿録』によせて―」についてです。ここでは活字と肉筆の違いとか、肉筆は肉声と結びついているということが書かれていました。
私の知り合いの点字ユーザーの方には、手紙を書くときに触覚や持っている視力を使ってペンで文字を書く方がいます。普段使わない字の形を覚えているのがまず凄いですよね。私たちからしたらキリル文字を書けるかという話だと思います。見たことはあるけど大勢の方は普段使わないですもんね。
その点字ユーザーの方は、手書きの方が「晴眼者」の方からすれば気持ちが伝わりやすい筈だということで、ペンを選択することがあるそうです。
ただし点字にだって「癖字」とか「綺麗な字」はあります。凸部分のでっぱり度合いが弱いとか、強く打ちすぎて紙が破けて穴が大きく空いているとか。書いた人がその時焦ってたなとか元気が無いなというのは、ともするとペンで書く字よりも分かりやすいかもしれません。
触覚によって肉声と結びつく例ってのは活字でもあると思います。昔の印刷機の文字が紙に乗っかっていて撫でるとぼこぼこしているあれを、今わざと選択して本に使う人だっているんじゃないですかね。
ドラマ「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」の黒川くんが格好いいと話題の近頃ですし、肉声を感じる、書き手を嗅ぎとる方法は色々あるのかもしれません。
もちろん「ほくたん」第9号はこの特集以外にも、たくさんの短歌や、どうやって短歌を作っているかのエッセイなど色々バリエーション豊かに収録されていました。まず感じたのは、短歌は別に活字嫌いに優しくないということです。31音は意外と一行埋めますし、内容がハイコンテクストというか、字義通りにとってもどうにもならない物ばかりなので、かえって難しいです。まだ全部読めていません。
あとは吉峯行人さんのエッセイ「ちびまる子ちゃんで言うと、」が面白かったです。活字が好きな人という自分とは相容れない人っていうのはこういう事を考えているのかと勉強になりました。エッセイは比較的ギリなんとかまだ読みやすい文章ですね。みんなエッセイ書いたらいいと思います。
最後に、全部読めていないながらも好きだなと思った短歌をご紹介します。文章のことばっか喋りましたが「ほくたん」は短歌がたくさん載っています。短歌が好きな人は読むと楽しいと思います。
菓子パンの袋ふくらみ 春という季節のまるさにはじめて気づく(東出六花さん「さがしもの」より)
言われてみれば春ってまるいイメージありますね。そんで菓子パンってたまに浮かぶんかってくらいパンパンに空気入ってるやつありますよね。アタックくらいは打てますね。多分春が一番パンパンですね。パン祭りもありますし。
優秀な遺伝子だけが残されて安くて美味しいお肉を食べる(百瀬雪さん「大学二年生」より)
??「ね、言ったでしょ? 扉はもう、開いちゃったの」遺伝子操作は食べ物の命を「無駄に」しないところが地球にやさしいですよね。びっくりするほどユートピア!
ありがとう。は漕ぎやめの合図 もうすでにオールのしぶきは川面にとけた(西希さん「キャッチ、ロー」より)
マリンスポーツはいいぞ!二人の息の些細な合う合わないとか大きすぎる自然との対峙とかエモに溢れてるよね。私がやってたのはヨットですけど声の温度とか静かな水紋とか、わかりみ深いですよこれは。
毎日が誰かにとって生憎の天気 枯れ始めの紫陽花(宮川漣さん「いと、ひと、」より)
枯れ始めの紫陽花が好きな人だっているし、紫陽花がどの天気が好きかはその紫陽花によるのかもしれないですね。好きな天気じゃなく生憎の方なのが引き合いに出された紫陽花もたまったもんじゃないと思います。
真昼わたしの影はわたしを出て行って小さな靴ずれが羽のよう(佐倉誰さん「パルプ・フィクションを見なさい」より)
数ある怪我の中でも全然ふわふわしてない靴ずれが羽になりました。影はわたしを出て行って、って素敵ですね。白昼のぽっかりとした明るい雰囲気だから出て行った影もくっきりしてふわふわ歩いてそうですね。
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